PRESS RELEASE

BNEFリポートより:2025年のEV販売台数は過去最高を更新 米国での伸び鈍化も、中国と新興国がけん引

KEY TAKEAWAYS

  • ブルームバーグNEF(BNEF)が発表した調査リポート「電気自動車の長期見通し」によると、リチウムイオン電池の価格低下と、より低価格なモデルの生産拡大を背景に、今年の世界の乗用電気自動車(EV)の販売台数は約2,200万台に達し、2024年比で25%の大幅な増加が見込まれます。
  • 世界のEV販売台数のうち、中国が約3分の2を占め、欧州が17%、米国が7%を占める見込みです。一方、新興国市場は、中国の自動車メーカーによる販売を背景に、急速に成長しています。
  • 中国におけるEVの年間販売台数は、来年、米国における新車販売の総数を上回る見込みです。
  • 米国の規制環境の変化を受け、BNEFは今回初めて、乗用EVの世界的普及に関する短期および長期見通しを引き下げました。
  • 一部の地域では、EVの充電にかかる電気代が急激に高騰しています。EVの普及と販売においては、車両価格や充電費用の手頃さが、今後も極めて重要な鍵となります。

*本プレスリリースは、BloombergNEFが2025年6月18日(現地時間)に英語で発表を行ったプレスリリースを日本語に翻訳・再編集したものです。オリジナルのプレスリリースの正式言語は英語であり、この内容および解釈については下記の英語版が優先となります。英文オリジナルにつきましてはこちらのサイトをご参照ください。

 

【ロンドン、ニューヨーク、2025年6月18日】 ブルームバーグNEF(BNEF)は年次リポート「電気自動車の長期見通し(EVO)」を発表しました。本リポートによると、リチウムイオン電池の価格下落と低価格EVモデルの生産拡大を背景に、2025年のバッテリー式電気自動車(BEV)およびプラグインハイブリッド車(PHEV)の販売台数が、前年比25%増の約2,200万台に達する見通しです。販売台数のうち、中国が約3分の2を占め、欧州が17%、米国が7%と続きます。さらに、PHEVは、今年世界で販売される車両の4分の1を占める見通しです。数年前まで、EVのシェアが世界の乗用車販売台数の5%未満にとどまっていたことを考えると、大きな成長と言えるでしょう。

世界的にEV販売が増加している一方、BNEFは、米国のさまざまな政策変更を主因として、今回初めて乗用EVの長期・短期普及見通しを引き下げました。米連邦政府による燃費基準の引き下げ、EV税額控除の段階的な廃止、さらにカリフォルニア州が独自に大気汚染基準を設定する権限を撤廃する可能性を背景に、米国でのEV普及は大きく減速し、世界的な普及ペースにも影響を及ぼす見通しです。米国における乗用EV販売台数は、2025年の160万台から2030年には410万台に達する見通しで、依然として増加が見込まれます。もっとも、今回、BNEFは見通しを下方修正し、同期間の累積販売台数は従来の見通しより1,400万台減少すると予測しています。

中国は、平均してEVが同タイプの内燃機関車(ICE車)より安価に購入できる唯一の国となっており、この優位性によって、欧州や米国との差をさらに広げています。中国の優位性をさらに示す点として、本リポートは、2024年に世界で販売されたEVの69%が中国で生産され、タイやブラジルなどの新興国市場において中国の自動車メーカーがEV販売で大きな存在感を持つことを指摘しています。こうした販売状況は、変化する米国の政策環境と相まって、タイなど一部の新興国市場におけるEVの普及が米国を上回る結果となっています。EVはまず先進国で普及し、それから他地域に広がる、という従来の見方に疑問を投げかけるものです。中国を除く主要自動車市場では、英国がEV普及率でリードしており、ドイツをも上回って欧州で最も高い水準となっています。

BNEFのセクター別および地域別の専門家チームによるグローバルな調査に基づき、本リポートは道路輸送に関する2つのシナリオを見直しています。ベースケースである「経済移行シナリオ(ETS)」では、EVの普及は現在の技術および経済トレンドに基づき、新たな政策介入がないことを前提としています。このシナリオでは、EVは2035年に世界の乗用車販売台数の56%、2040年には70%を占めると予測されており、前回の見通しで示された73%から下方修正されています。EVの急速な普及にもかかわらず、ETSでは、2040年時点で世界の乗用車のうちEVが占める割合はわずか40%にとどまり、ネットゼロ・シナリオの排出削減目標には遠く及ばない結果となっています。

コリン・マッケラチャー(BNEFクリーン輸送・エネルギー貯蔵部門統括)は、次のように述べています:「2024年は電動輸送にとって重要な年でした。EVの世界的な販売台数が過去最高を記録し、アジアと中南米の新興市場で急速に普及が進みました。こうした追い風があるにもかかわらず、EVの短期的および長期的な普及ペースは、米国の政策環境の変化を主な要因として鈍化するとみられます。EVの世界的な普及ペースの変化は、バッテリー業界にも大きな影響を及ぼし、生産過剰につながると見られます。」

本リポートによれば、EV向けバッテリーの需要は引き続き増加しているものの、その伸びは従来の見通しを下回っています。BNEFによる2025年から2035年のバッテリー需要見通しは、前年から8%減少し、バッテリー換算で3.4テラワット時の減少に相当します。その大半(2.8テラワット時)は、米国における乗用EV販売台数の減少によるものです。こうした状況は生産能力の過剰を招き、バッテリー価格の低下と市場競争の激化を引き起こしています。中国では、バッテリー工場の平均稼働率が現在50%を下回っています。もっとも、短期的には減速傾向が見られるものの、EVの普及はあらゆるセグメントで加速しており、バッテリー用金属の長期的な成長は依然として堅調です。

公共のEV充電コストも、EV普及の大きな課題となっています。現在、EV保有者の多くは家庭での充電に大きく依存しており、ガソリン対比、走行1キロメートルあたりのコストが25~60%安価となっています。一方、公共のEV充電コストは高止まりしています。公共の高速充電料金は、2022年以降、特に米国と欧州で急騰しており、ガソリンよりも高くなるケースも見られます。結果として、燃料補給コスト
は、EVの普及や販売後のEVとICE車の価格パリティに対し、時間の経過とともに大きな影響を及ぼすと予想されます。

BNEFでEV部門を統括するアレクサンドラ・オドノバンは述べています:「EVの普及は世界的に飛躍的に進んでいるものの、今後のさらなる普及には、安定的かつ包括的な政策が依然として不可欠です。バッテリー価格の下落やEVの経済性向上に支えられた電動化の長期的トレンドを見失う自動車メーカーは、主要自動車市場から淘汰されるリスクを抱えることになります。」

2025年版「電気自動車の長期見通し」のその他の主な調査結果は、以下の通りです:

  • 最も急成長しているドライブトレインは、レンジエクステンダーEV(e-REV)であり、販売台数は2024年に83%増加して120万台となりました。e-REVはプラグインハイブリッド車の一種ですが、使用実態は完全な電気自動車に近く、バッテリーパックの平均容量は38kWh、電気のみの平均航続距離は170km、総走行距離の70%以上を電気モードで走行します。
  • 中国では、政府の支援や補助金、バッテリーの品質向上、コストの低下、製造競争の激化を背景に、電気トラックの販売台数が急速に拡大しています。BNEFの予測モデルによれば、2030年までに中国における商用電気トラックの普及率は46%に達すると見込まれています。
  • 三輪車は、他の車両セグメントよりも急速に電動化が進んでおり、2024年にはEVが販売台数の80%超を占めています。同セグメントは小規模ながら、ネットゼロ・シナリオの達成に向けて最も早く軌道に乗った道路輸送分野です。
  • 現在、EVは主要な電力需要源であり、中国のEVだけでもスウェーデン1国分を超える電力を消費しています。乗用および商用EV、電動バス、電動二輪・三輪車による電力需要は、2025年から2030年にかけて2.4倍に増加すると見込まれています。
  • 全固体電池は現在実用化されつつあり、2035年までに世界のEVおよびエネルギー貯蔵バッテリー需要の10%を占めると予想されています。これらの次世代バッテリーは、安全性とエネルギー密度の面で大きな利点があり、まず高性能な高級車に搭載される見込みです。メーカー各社は、年間合計830ギガワット時を超える全固体電池の生産能力を発表していますが、このうち実際に稼働しているのはわずか9.5%にとどまるほか、その大半は半固体電池技術によるものです。
  • 自動車全体に占めるEVのシェアが加速的に拡大する中、特に中国や欧州などの市場では、原油市場への影響がますます重大になりつつあります。2024年と比較して、2026年末までには世界全体で日量100万バレル分の原油が削減されると見込まれています。EVが走行するすべての距離をICE車が走行すると仮定した場合、2030年時点の道路輸送の燃料消費量は、1日あたり530万バレル多くなると推定されます。これは2024年に回避された量の2倍を超える規模です。
  • EVの保有台数は、今後数十年にわたって多くの国でICE車の保有台数を上回ると予想されています。ノルウェーが2030年に最初にこの転換点を迎え、中国が2033年、カリフォルニアが2037年、ドイツが2039年と続く見込みです。この移行により、欧州および北米における公共充電事業の収益は、2025年の約100億ドルから2040年には2,200億ドルへと大幅に増加する見通しです。

ブルームバーグNEFのお客さまは、https://about.bnef.com/insights/clean-transport/electric-vehicle-outlook/ (英語)およびブルームバーグターミナルで、リポート全文および全データビューアをご覧いただけます。エグゼクティブサマリーは、リンクからご参照ください。


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【本件に関する報道関係者お問い合わせ先】

ブルームバーグ広報代行:アシュトン・コンサルティング ac-bloomberg@ashton.jp


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