現在、世界でインターネットを利用していない人々は、40億人を超える。この事実は、開発とビジネスの両面において、インターネット利用を拡げるために大きな機会があることを示唆している。この「デジタルディバイド」を解消するためには、手ごろかつ信頼できる電力へのアクセス手段が必要だ。電力は、基幹ネットワークや携帯電話基地局向けのバックホールサービスの運用から、人々がインターネットに接続するために用いるデバイスの充電に至るまでの、全ての段階において必要不可欠なものだ。しかしながら、開発途上国の多くでは、依然として信頼できる電力へのアクセスは割高かつ困難である。
本稿は、Bloomberg New Energy FinanceがFacebook社との協同で執筆したレポートの要約版である。レポート全文(英語)は、こちらからダウンロード可能。
インターネット利用者の電力アクセス
家庭において電力にアクセスする手段がない場合、インターネットの利用は非常に難しい。それは主に、スマートフォンなどの機器の充電コストが高いこと、または充電手段を得ることが難しいことに起因する。たとえ3Gネットワークが届く範囲に居住していたとしても、もし家庭で利用可能な電気が不足していれば、スマートフォンの利用は限られる。途上国のオフグリッド地域(系統電力が届かない過疎地域)に居住する人々は、小規模なキオスクで携帯電話を充電するために、一週間に合計最長15kmもの距離を移動する。場所によっては、キオスクにおける充電サービスのコストが、スマートフォンの月あたり所有コストの3分の1を超え(月あたり2-7ドル)、かつそれは家庭収入の相当部分を占める。このような状況下では、人々がスマートフォンを充電することは困難で、所有・利用が制限される。
出展: Bloomberg New Energy Finance, Research ICT Africa, Facebook. 注:充電コスト(Vendor charging)は黄色部分。ハンドセット(スマートフォン機器)のコストは36ヶ月に分割されると仮定。一週間あたりの充電回数は5回とした。
近年、途上国の過疎地域における通信インフラやコミュニティに対する主な電力供給源として、(特に革新的なファイナンスの仕組みを通じて導入される場合において)小規模太陽光発電と蓄電池が注目を集め始めている。これらの技術の主要部分のコストは、急速に低下し続けている。電力アクセスビジネスを行う企業は、様々なビジネスモデルを展開し、これらの技術を利用して、消費者がインターネットに接続するための電力供給ソリューションを提供している。その中には、家庭向けポータブル太陽光発電キットや、村のコミュニティ内のビジネス及び携帯基地局への電力供給を可能にするマイクログリッドなどが含まれる。
過疎地域のインターネット利用者のための電力供給ソリューション
出典: Bloomberg New Energy Finance, Facebook.
通信インフラに対する電力供給
携帯電話ネットワークをより広範な地域に拡大し、携帯電話を接続できるようにするためには、新たな基地局を建設する必要がある。しかしながら、途上国の過疎地域では、基地局が割高な電力を利用せざるを得ないばかりでなく、そのネットワークがカバーする地域の人口密度が低いために、基地局による通信サービスが生み出す収益も限られる。そこで、従来型の通信インフラ向けの電力供給手段として安価かつ分散型の太陽光発電や、より小規模かつ高効率の基地局を活用すれば、より低コストで多くの人々に携帯電話ネットワークを届けることが可能になるだろう。
途上国のオフグリッド地域や系統電力供給が不安定な地域(系統に接続されているが、停電が頻繁に起こるまたは電力の質が低い)には、世界で合計100万基以上の基地局が存在する。これらは、通常、携帯電話ネットワークの運用中断を防ぐために、日中の大部分における主な電力供給手段としてディーゼル発電機を利用している。太陽光発電、ディーゼル発電機、蓄電池を組み合わせたハイブリッドエネルギーシステムを利用すれば、移動体通信事業者または基地局タワーの運用企業は、オフグリッド地域の基地局の電力コストを(ディーゼル発電機のみを利用する場合と比較して)最大で推定54%削減することが可能となるだろう。
太陽光ハイブリッドシステムを用いる場合、オフグリッド携帯基地局の電力コストは、ディーゼル発電機のみを利用する場合より最大54%低下
出展: Bloomberg New Energy Financeによる企業インタビュー, Homer Pro。注: ディーゼル発電機用燃料の運搬コストは考慮されていない。
企業間パートナーシップの豊富な機会
進歩した技術と革新的ビジネスモデルの組み合わせにより、「ラストワンマイル」(途上国の過疎地域で、電力アクセス手段が限られる、または携帯電話ネットワークが届かない地域に居住する人々)がインターネットを利用するために、代替的な電力供給手段を提供することが可能となった。大規模企業とスタートアップ企業の両方にとって、これを最大限に活用する機会が豊富に存在している。通信分野企業、エネルギー分野企業、そしてスタートアップ企業が、革新的なビジネスモデルや代替的な通信インフラ、アーリーステージのベンチャーキャピタルの提供においてパートナーシップを形成・協働することによって、今後数十億人が新たに電力アクセス手段を得、インターネットを利用することが可能になるだろう。
より詳細についてはレポートを参照。