PRESS RELEASE

エネルギートランジションへの世界投資額、2024年に初の2兆ドル突破:ブルームバーグNEF

    Solar panels produced by Solarworld AG are seen located in a field near to the company's plant in Freiberg, Germany, on Wednesday, June 12, 2013. Solarworld AG is among companies battling competition mainly from China that pushed solar panel prices down about 20 percent last year after slumping by half in 2011. Photographer: Krisztian Bocsi/Bloomberg

    本プレスリリースはBloombergが英語で発表を行ったプレスリリースを日本語に翻訳・再編集したものです。オリジナルのプレスリリースの正式言語は英語であり、この内容および解釈については下記の英語版が優先となります。

    • ブルームバーグNEFの「エネルギートランジション投資動向:2025」によると、エネルギートランジションへの投資は過去最高額到達も、伸び率は鈍化
    • 2024年の投資額は中国が首位、世界の伸びの大半をけん引-米国、EU、英国は後退
    • 成熟技術への投資は世界的に拡大の一方、新興技術への投資は軟調

     

    【ニューヨーク、2025130】ブルームバーグNEF(BNEF)が本日発表した年次リポート「エネルギートランジション投資動向:2025」によると、低炭素に向けたエネルギートランジションにかかる全世界投資額は、2024年、11%増加し2兆1,000億ドルと過去最高に達しました。この伸びをけん引したのは運輸部門における電化、再生可能エネルギー(以下、「再エネ」)、電力系統で、昨年はこれらすべての分野と蓄電池が最高投資額を更新しました。エネルギートランジション技術への投資総額は過去最高を記録した一方で、伸びのペースは、年間24-29%で急拡大を見せた過去3年間よりも鈍化しています。

    運輸部門における電化は、引き続き最大の投資分野となり、2024年には7,570億ドルに達しました。内訳としては、乗用電気自動車(EV)、電動二輪・三輪車、商用EV、公共充電インフラ、燃料電池自動車(FCV)等への投資が見られました。再エネ投資額は7,280億ドルで、内訳は陸上・洋上風力、太陽光、バイオ燃料、バイオマス、廃棄物、海洋、地熱、小規模水力発電等への投資であり、電力系統向け投資額は3,900億ドルで、内訳は送配電線、変電所設備、系統網のデジタル化等への投資がありました。

    また、同リポートは、クリーンエネルギー経済のうち、成熟技術と新興技術間での投資状況が著しく異なることを明らかにしました。2024年の投資の大部分を占めたのは、再エネや蓄電池、EV、電力系統といった、既に実証済みで商業的に拡張性があり、ビジネスモデルが確立されている技術でした。これらの分野への投資額は、政策決定による制約、金利の上昇、および消費者購買意欲の鈍化予想にもかかわらず、14.7%増の1兆9,300億ドルに達しました。

    対象的に、熱の電化、水素、二酸化炭素回収・貯留(CCS)、原子力、クリーン産業、クリーン海運などの新興技術への投資額は、1,550億ドルにとどまり、新興技術全体では前年比で23%減となりました。これらの分野への投資が軟調となった要因には、経済性、技術の成熟性、商業的な拡張性などが挙げられます。これらの産業を拡大するためには、官民両セクターでの新興技術におけるリスク軽減に向けた取り組みを強化させる必要があります。そうしない限り、新興技術が今後10年間で排出量削減に有効な効果をもたらす可能性は低いと考えられます。

    2024年の最大の投資市場は中国本土で、同国だけで2023年から20%増となる8,180億ドルの投資額となりました。中国の投資の伸びは、世界全体の3分の2に相当し、同リポートで分析対象としたすべての技術において堅調な伸びが見られました。

    EU、米国、および英国は、2023年には世界の伸びをけん引しましたが、2024年は異なる結果に終わりました。米国での投資は停滞し、3,380億ドルにとどまりました。また、EUと英国の投資はそれぞれ3,810億ドルと653億ドルに減少しました。2024年の中国の投資総額は、米国、EU、英国の投資額をすべて合わせた金額を上回りました。同リポートで分析対象とした大規模市場のうち、インドとカナダも世界全体の伸びに貢献しており、投資額の伸び率は、それぞれ13%と19%でした。

    またBNEFでは、パリ協定に従って2050年までの世界規模でのネットゼロ実現に向けた軌道に乗るには、2025年から2030年まで毎年平均5兆6,000億ドルのエネルギートランジション投資額が世界全体で必要と報告しています。本分析結果は、ネットゼロに向けた世界規模の軌道を詳述したBNEFの「長期エネルギー見通し(NEO):2024」に基づくもので、現在の投資水準は軌道に乗るために必要な水準のわずか37%であることを示唆しています。「投資ギャップ」は、地域や技術によって異なっており、中国は軌道に乗るために必要な水準に最も近く、ドイツと英国がそれに続きます。

    BNEF副最高経営責任者(CEO)であるアルバート・チャンの見解は、次の通りです。「BNEFの同リポートからは、政治的な不確実性と金利の高さにもかかわらず、エネルギートランジションへの投資が過去数年間でいかに拡大したかが分かります。世界規模でネットゼロの目標を達成するには、産業の脱炭素化、水素、二酸化炭素回収のような新興分野においては、依然として多くの課題が残っています。これらの技術の潜在性を引き出すには、官民連携が唯一の解決策になります」

     BNEFの同リポートでは、低炭素に向けたエネルギートランジションへの投資に加え、エネルギー技術に関連する設備工場やバッテリーメタル製造など、クリーンエネルギーのサプライチェーンへの投資も追跡しています。2024年におけるこれら投資額は、1,400億ドルへと多少低下したものの、2025年には1,640億ドルへ拡大する見込みとなっています。電池セル製造工場は、特に資本集約的であるため、2024年にはサプライチェーンへの投資総額の約6割が電池向けでした。

    最後に、「エネルギートランジション投資動向:2025」では、気候テックにおけるエクイティファイナンス、およびエネルギートランジションにおけるデットファイナンスも分析しています。

    気候テック関連企業による2024年の非公開・公開株式市場からの資金調達額は、前年比40%減の507億ドルと、3年連続の減少となりました。リードしたのは、クリーン電力・運輸部門の企業で、総額318億ドルを調達しました。株式による資金調達規模が最も大きかったのは米国市場で、新規株式発行額は179億ドルを記録しました。中国は90億ドルと2位に後退しました。

    2024年のエネルギートランジションのデットファイナンスは、総額1兆ドルに到達し、2023年から3%増加しました。最も多くを占めたのは社債で、世界各地での金利の引き下げに伴い、5%拡大しました。社債が増加した一方で、プロジェクトファイナンスの金額は低下し、各国政府のエネルギートランジションに関連する負債水準は前年比で横ばいとなりました。その他の分析結果と同様に、エネルギートランジションのデットファイナンスの二大市場も米国と中国本土となり、昨年は両市場ともデット発行額が増加しています。


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